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大村藩の志士松林飯山について

桜(大村城址)

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飯山文庫より

付言.正気百首の掲載に際して

これから少しずつ飯山文庫に登録されている『正気百首』を紹介していきたいと思います。五教館にて尊皇の士気を鼓吹するために教授されたようです。
さて古文書の読解は素人には難しく、変体仮名の字典とにらめっこしながら文字を起こしていますが、思うようにはいかない状況です。分からないところは空欄だったり、あるいは読み解き誤って、本来と別の文字を起こしている可能性も否めません。あんまり時間もとれないので、万全を期してアップロードするよりも、中途過程を挙げて、追って修正していくかたちを取りたいと思います。


正気百首 1~10

1. うたてやむ ものならなくに 唐衣 いつまてあたに 世をすこすへき / 御製
2. あつさ弓 をしてる神に 願ふなり 引かへさなん うらの異ふね  / 太宰師熾仁親王
3. 浮雲の かからはかかれ 世の中の かかみにうつる 秋のよの月 / 贈大納言斉昭卿
4. 大君は いかにいますと あふきみれは 高天の原は 霞こめたる / 三条中納言実美卿
5. よのはるを 長閑にとおもふ おもひのみ 花みるときも わすれさりけり / 三条西中納言季知卿
6. はらはすは かかみも塵に くもらなむ みかけやみかけ 大和たましゐ /東久世左少将通禧朝臣
7. えにしあれや いくもかへるも 舟とめて かかる湊に よるそうれしき / 壬生修理権大夫基修朝臣
8. おもひきや 野田のかかしの 竹の弓 引きもはなたて 朽はてんとは / 中山侍従忠光朝臣
9. 春風に なひくやなきは 色めきて すくなる竹は 雪折にけり / 長門守大江定廣朝臣
10. いまさらに 思へはなにか 石清水 加茂の御幸も きのふなりしを / 錦小路右馬頼徳朝臣


正気百首 11~20

11. 木枯らしに 吹立られし かしのみの はやくもおつる 神無月かな / 小林民部権大輔
12. 見せはやな こころのくまも 月影も すみた川原の 秋のゆふはへ / 藤田誠之進彪
13. 今更に 何をかいはん いはすとも わか真心は しる人そしる / 安島帯刀
14. わか妹の いたくをさな子 よりよりに 父はといはは いかかこたへむ / 鵜飼吉右衛門
15. 老か身の 終るいのちは をしからし よに功の なきかかなしき / 梁川緯
16. きみか代を おもふこころの ひと筋に 我身のことは わすれはてけり / 梅田源治
17. わか罪は 君か代おもふ 真心の 深からさりし しるしなりけり / 頼三樹八郎醇
18. かくすれは かくなるものと しりなから やむにやまれぬ 大和たましゐ /吉田乕次郎矩方
19. 敷しまの 大和にしきの 御はたもて 皇軍の さきかけやせむ /佐野竹之助光明
20. ふりつもる おもひの雪は はれはれと 仰くもうれし 春の夜の月 / 蓮田市五郎

正気百首 21~30

21. さくら田の 花とかはねは さらすとも 何たゆむへき やまとたましゐ / 林忠左衛門
22. はるはると 心こし路の けふこそは おもひもはれて むすふ夢かな / 黒澤忠次郎
23. むさし野に いつ咲へきか 山さくら けふのあらしに ちるやもののふ / 杉山弥一郎
24. 君かため おもひのこさぬ 武士の なきひとかすに いるそうれしき / 森山繁之助
25. ひとすちに おもひ染けん 大和鉾 打てくたくる 名のみなりけり / 森五六郎
26. 鳥か鳴 あつまの春の 真心は かしまの里の 人とこそしれ / 高橋多一郎
27. いはかねも くたけさらめや 大丈夫の 國のためとて おもひきる太刀 / 有村治左衛門兼清
28. いまさらに 何をかいはん ますらをの おもひ射る矢の こころたゝねは / 野口正安
29. 國のため ちきりし事も ちりちりに さそふ浮き世の 風はうらめし / 大津之綱
30. 死ぬるとも 何かうらみん けふ迠も なからえんとは おもはさりけり / 武田明徳

正気百首 31~40

31. はつかしと おもふ心は した露の 消ても残れ もののふのみち / 冨永義道
32. 死ぬる身は さらにをします おもふ事 とけぬ事こそ くやしかりけれ / 奥野揚
33. おもひ射る まとはとをさて 梓弓 ひとやのうちに いるそくやしき / 岡崎惟彰
34. 心あらは しはしまたなん さくら花 われも浮世の 風にたえなん / 大高祐武 
35. 死ぬる身は 更にをします えみし等を うたぬ斗そ うらみなりける / 服部秀正
36. 吹風に あらねとけふは 大君の こころにかかる くまやはらはん / 平山兵介繁義
37. 東路の むさしの春は たちにして くもゐにあけよ あし田鶴の聲 / 小田彦次郎朝儀
38. 白髪の 老をみすてて くにのため 尽すまこころ 神そしるらん / 越智顕之
39. たふれしを きわめ尽して 後にこそ 露のいのちを 何をしむへき / 黒澤五郎保高
40. むら雲は かかれと君に さそはれて 浮世はなれし 月をなかめん / 高畠萬三胤正

正気百首 41~50

41. 大君の うきをわか身に くらふれは 旅寝のそての 露はものかは / 児島強介草臣
42. かそいろの そたてし身をも 君かため すつるは代々の 恵おもへは / 川本杜太郎弌
43. 皇神の ちかひのままに かしこみて まもら傳やある 大和しまねを / 横田藤四郎祈綱
44. あなうれし わか大王の みこころも やかてやすまむ 年とおもへは / 石黒簡斎
45. 大空を てりゆく神や しらすらん くにのためとて 尽すこころは /堤杏左衛門
46. きみかため いさむこふしを むなしくも 枕となして けふもくらしつ / 三輪田郁太郎
47. ちるときを 子にをしえたる 言の葉も 千とせに匂ふ さくらゐのさと / 諸岡節斎
48. 日のみかけ てらすとすれと 中空に あやしき雲の 立ちへたてつゝ / 藤本津之助真金
49. 梓弓 引しほりつつ まちわふと えみしに告よ 天津かりかね / 吉村乕太郎
50. 國のため いのちしにきと 世の人に かたりつけてよ 峯の松風 / 松本謙三郎衡

正気百首 51~60

51. 雲をふみ あらしをよちて 三熊野の はてなし山の 果もこそみれ / 伴林六郎光平
52. あたし野の 露と我身は きゆるとも 魂はみやこに 有明のつき / 澁谷伊與作
53. おやのおや 親よりうけし 大君の 厚き恵は あにわすれめや / 乾十郎與龍
54. 大君に つかへそまつる その日より わか身ありとは おもはさりけり / 深瀬茂
55. ふるさとの 花をみすて まよふ哉 都の春を おもふはかりに / 中垣謙太郎
56. もののふの まことをとへは 紅葉の 散ての後そ にしきなりける / 安積五郎
57. もる人の あるやなしやは しら露の おきはかれにし 撫子のはな / 間崎哲馬弘
58. なきたまは 長門の国に なからへて 世をおもふ君の かけにたはや / 川村能登守
59. 大君の 大御随意 いてまして はなみそなはす 春になりせは / 宮部鼎三中原
60. 天津風 ふけやにしきの 旗の手に なひかぬ艸は あらしとそおもふ / 平野次郎國清

正気百首 61~70

61. すめらきの 新羅しま根に たてし矛の 動かぬ御代と しらすやあるらん / 高橋祐次郎
62. おくれては 桜も梅に おとるへし 先かけてこそ 色も香もあれ / 南八郎
63. 玉鉾の 道ひとすちに ふみてこそ わか日の本の 人といふなれ / 戸原卯橘
64. 大山の 峰のいはほに 埋みけり わか年ころの 大和たましゐ / 真木和泉守保臣
65. 荒礒に よするしら波 岩にふれ 千ゝにくたくる わかおもひかも / 久坂儀助
66. なきたまの 行衛をとはは 九重の うてなの竹の 露とこたへよ /柳井健次友政
67. かねてより 捨し身なれと 今更に 親のこころそ おもひやらるる / 原道太盾雄
68. なき跡に 我真こころを とはれなは 皇御國の 人とこたへよ / 多岡駿三郎久恒
69. 張つめて たゆまぬものは 大丈夫の 赤きこころの 弓にそありける / 半田紋吉
70. まちまちし 秋に逢けり 大きみの 御ためにしなん 艸の上の露 / 望月亀彌太義澄

正気百首 71~80

71. きみとおやに わかれ木曾路の 旅枕 夢より外に あふよしもなし / 太田為吉執中 
72. 散る花に おくれしものと はせし身も また故里の 秋を経にけり / 千屋菊次郎考健
73. 身まからは 天翔りても 御門へを まもらさらめや 益荒夫我は / 今枝恭三道矩
74. 今更に なにあやしまむ 空蝉の よしもあしきも かはる世の中 / 益田右衛門介
75. よしやよし 世はさりとても 我こころ 皇國のために なを尽さはや / 國司信濃
76. あちきなや 梅の香ほりに うかされて 松のみとりの 露となりぬる / 武田伊賀守正生
77. たらちねの 親の言の葉 身にしみて 人にをくれし 死出の山こえ / 武田彦右衛門
78. 梅はちの 花の匂ひに ほたされて わか身の果を しらぬつたなき / 武田魁助
79. さく梅は 風にはかなく ちりぬとも 匂ひはきみか 袖にうつして / 藤田斌雄
80. 春来ても なにたのしまむ 大王の 花みそなはす こともなき世に / 梅村真一郎道守

正気百首 81~90

81. 手つつ山 おろすあらしの はけしきに まこころおのこの 髪さかたちぬ / 栗田源左衛門
82. 禍津日の 太刀の刃風に ちらむ身の こころさしこそ 後に知るらめ / 源知新
83. さきかけの 花はあらしに 散にけり 風にあふへき 枝ならなくに / 藤原重孝
84. ふる雪は いつこを花と しら梅の 香ほれる枝の なつかしきかな / 直本東平嘉重
85. 雪のうへの 人に見せはや 春雨に つるの羽衣 ぬるヽすかたを / 川上清太郎
86. 白雪の きえなん間さえ まちわひて しのひ音に鳴く 谷のうくひす / 中村俊之介
87. 東路を いてて日数を ふる雪の いつかおもひの 解すやはある / 黒澤理八郎
88. ももしきの 大宮人に つけまほし 藪のうくひす けふの初音を / 沼田亮之介
89. おもひ寝の わか手枕に 逢と見し 夢おとろかす あかつきの鐘 / 瀧平主殿佳幹
90. 逢逢と 雪や氷を ふみわけて いつかとけなん 賤か真こころ /森川長吉郎

正気百首 91~100

91. よしや身は 敦賀の里に さらすとも なとたゆむへき 武士のみち / 米川文蔵
92. しひてふく 嵐の風に あふ花は いさきよくちれ いさきよくちる / 川邉信蔵
93. 諸人の 深きなさけに 死出のやま いさましく社 われは越なむ / 塙又三郎重義
94. さくとみて いさましくちれ 世の人に 惜しまれてこそ 桜なりけれ / 齋藤好二郎強
95. きみかため 死ぬる我身そ うれしかる 名は立花の にほひ残して / 立花辰之助氏順
96. たふれしを 切てふふりて もののふか 打やもらさし 見えし黒船 / 砂押忠三郎
97. 敷島の 道たとる身は さゝかにの くもゐの庭に ひかれきにけり / 松尾多勢子
98. 四方に名を あけてそかえれ かへらすも をくれさりしと 母にきかせよ / 児島強介母
99. いにしへの 木の丸とのは 野となりて 名のる関のみ しけき御世哉 / 野村望東尼
100. 武士の やたけこころの あつさ弓 ひきて返すな 名をあくるまて / 竹下熊雄母

正気百首 序

 天下の正気、伸びて屈せざれば、則ち主威は益ます尊く、國勢は益ます◆、◆狄は敢えて邉◆に偪らず、邪◆は敢えて朝廷に立たず、逆亂の臣は敢えて神器をカ??せず。屈して伸びざれば、則ち日月は缺蝕し、雲霧は閉塞して、魑魅魍魎、豺狼狐狸、鱒(魚単)の屬、将に横行して禁ずる所無からんとす。夫れ正気の國に於けるや、其の関係豈◆重ならずや。癸丑以後、幕府は政を失し、擅與外◆通互市。上は聖詔に違い、下は民心に悖る。

 是に於けるや、有志の士坐視するに忍びず、臂を奮って先を争いて起つ者、其の幾百千人なるを知らず。起つに随い死に随いて、海内相戒む。敢えて幕府に抗すること莫(な)くして、正気は葢(おお)われ、亦(また)屈するに幾(ちか)し。

 ◆其の人死すと雖も、而も其の詠む所の歌は、往往世間に流傳し、読む者をして感慨涕下せしむ。今にして編録に及ばざれば、則ち吾正気の歌に在る者を并(あわ)せて之を亡するを恐る。乃ち聞く所を録し、人各おの一首を採り、歌一百を得。?集して巻を成す。命じて正気百首と曰う。

 其の首(はじめ)に御製を載するは、聖意の在する所を見る所以(ゆえん)なり。其の末に婦人を載するは、人をして丈夫の為して愧ずべきを知らしむる所以なり。嗚呼、此の巻載する所、一二の搢紳を除く外、概して賤官下僚の士に非ざれば、則ち山林草澤の一布衣のみ。而して上は聖主と同伍し、貴きこと公卿たりと雖も詞は金玉の如し。苟(まこと)に正気有る者に非ざれば、皆是れを與(とも)にするを得ず。正気の貴ぶべきを信じて、区々たる富貴、才藻、豈是以て其の人を軒?せんや。

 此の書、元治甲子に功を起ちて、慶應丙寅に?、序成る。適たま飛報を得。曰く、長藩と幕府兵を交ゆと。

                                                洛西狂生斗山識

正気百首の後書き、及びHP掲載の謝辞

此の書は京師の友人某が為に贈る所。選者は其の何人たるを詳らかならず。洛西の字に拠れば、蓋し京郊の隠者なり。然りて摂津以て西二十九国皆洛の西に在れば、則ち亦焉んぞ臆して之を定めることを得んや。吾は則ち選の精を取りて、必ずしも其の人を問はざるなり。
                                           丙寅孟秋上院 飯顆山人漸

(謝辞)
古文読解の心得のない素人にとって、このように高い完成度をもってHPに正気百首を掲載することができたのは、ひとえに飯山研究の先輩であり、同郷の大先輩である吉本信之氏のご協力によるものである。
私の場合は研究というよりも憧憬から先人に接したいという思いのみで事に当たっているようで、学究の心得もなくて覚束無い。そういうこともあって余計にこの先輩の協力が有り難かった。この場を借りてお礼を述べささていただく。